今回の話し手 ALL YOURS 原康人さん
株式会社オールユアーズ代表取締役
兼 製品開発・製造総責任者

1979年10月16日生まれ、大阪府出身。服飾専門学校卒業後、繊維商社に入社し5年間在籍。原料から生地、最終製品の企画に携わる。
退職後、ドクターデニムホンザワこと本澤裕治氏に7年間師事。ラグジュアリーブランドから量販店まで幅広くジーンズの企画に携わる中で、大手衣料品チェーンのプライベートブランドの商品企画に6年間携わり、小売りの店頭から発想し開発する商品企画で、数多くのヒット商品を生み出す。
そののち、フリーランスの期間を経て、2015年7月1日にオールユアーズを起業。「あたりまえを、あたりまえにしない」「あなたの知らないあたりまえを、カタチにする」という商品開発に対する強い信念を持ち、プロダクトに関わる 「考える」「作る」「届ける」「使う」「捨てる」と向き合い、川上の事業者を巻き込みながら独自の発想で製品を世に出し続けている。

着ていて疲れない、自宅で洗える…「ALL YOURS」のプロダクトへのこだわり

かおりん原さんが代表を務める「ALL YOURS」の事業について教えてください。

原康人さん(以下、原)ALL YOURSは世の中的にいうと、服を作って販売しているアパレルの会社です。一般的なアパレル企業は、プロダクトよりシーズンやトレンドなどの情報を意識している傾向がありますが、ALL YOURSはプロダクト重視のブランドであり、メーカーです。

トレンド重視の場合、そのトレンドが終わってしまうと洋服も役割を終えてしまいます。ですが、僕たちはトレンドに関係なく「1つの商品を出来るだけ長く着てもらいたい」という考え方で服をつくり、販売しています。

かおりんありがとうございます。プロダクトのこだわりについて、具体的に教えていただけますか?

例えば「着ていて疲れないこと」や「自宅で簡単に洗えること」にこだわっています。僕たちはどちらかというと、洋服を「着飾るためのもの」ではなく、鉛筆やボールペンのように「毎日使う道具のようなもの」という考え方で、シンプルで普遍的なものをつくっています。

ユーザーの声に応える、双方向・課題解決型のプロダクト開発

かおりんALL YOURS立ち上げの経緯を教えてください。

僕は20代後半から、全国に500近い店舗がある大手衣料品チェーンの企画開発担当として約7年間携わりました。その会社にいたときから、今のALL YOURSと同じ考え方で商品を企画していました。しかし当時の会社の経営層は「流行っていて売れるものを、隣のお店よりも安く売りなさい」というような指令を出す会社で、「誰のために服を作っているだろう」と考えるようになりました。

当時の僕の仕事は、「約500店舗全体で売れるものを作る」ことでした。そこで僕は、「これが流行っているから売りなさい」と一方的にトップダウンで指示を出すのではなく、店舗の人たちと積極的にコミュニケーションを図るようにしました。それこそが、売れる商品を作る一番の近道なのではないかと考えたからです。
僕も、もともとは最先端のトレンドをもとに商品を考えていました。しかしコミュニケーションを取ることで、その考えが店舗の人たちの声とかけ離れていることに気付いたのです。それからは一方的にトレンドを押し付けるのではなく、「双方向でものをつくる」という考え方に変わりました。そうした疑問や考え方の変化がモチベーションに変わり、「お客様のための服を作りたい」と考えるようになり、ALL YOURSを立ち上げました。

ALL YOURSの服は、お客さんの「困っている」という声に基づいて開発しています。僕たちのプロダクト開発は、基本的に「課題解決型」なのです。

かおりん課題を解決していくことで、現在のALL YOURSに辿りついた、ということなのですね。実際に立ち上げてみて、お客様からの反応はいかがですか?「こういう言葉をいただいた」というのはありますか?

言っていただいて一番嬉しかったのは、「毎日着てしまいます」です。僕たちにとって一番のほめ言葉です。毎日着るというのは、その人の愛用品になっているということですからね。

世田谷区の人たちともっとつながるためにSETAGAYA PORTに参加

かおりんSETAGAYA PORTとの関わりのきっかけを教えてください。

実は、SETAGAYA PORTを運営しているdot button companyの代表も、僕と同じ衣料品メーカーに勤めていたのです。

当時から、彼も僕と似たような疑問を抱いていたと聞いていました。退職後、それぞれ進む道は違いましたが、コミュニケーションはずっと取っていました。その彼から、新しくSETAGAYA PORTをやると聞いて、僕は学校を卒業後18年間世田谷区に住んでいたにもかかわらず、世田谷区との関わりをこれまであまり持てていませんでした。SETAGAYA PORTの詳細を聞き、世田谷区の人たちともっと繋がれそうだと思い参加しました。

衣類を回収して再利用。世田谷区からゴミを減らす活動を広げたい

かおりん今後、こういう活動をしたいという具体的なことはありますか?

衣類ごみを削減し、100%資源に還す活動です。僕たちは、「つくったものに責任を持つ」というのをとても大事に思っています。それは、自分達が作ったものは廃棄するまで自分たちで面倒をみるということです。 なので僕たちは、「ユーザーが購入し、着なくなった自社の製品を回収する」という活動を今年の夏から開始しています。もともとは自社製品だけを対象にしていましたが、「他メーカーの服も一緒に回収してほしい」という声が出てきたので、新たに他社製品の回収も始めました。

かおりん回収した衣類はどうするのですか?

僕たちで少し手を加えて、企業のユニフォームとして再活用していただいている事例があります。各社さまざまな循環システムを運用されていますが、僕たちは、洋服は洋服のまま、できるだけ手を施さずに再活用することこそが、最も負荷が少ないと考えています。
また、回収したけどすでにボロボロのものや汚れてしまっているものは、磁気熱分解装置を使って100%資源に変えます。皆さんは、僕たちに衣類を渡すだけでこの活動に参加できるのです。今後、この活動を世田谷区に広げていきたいと考えています。

現在は衣類を郵送してもらっているのですが、例えばそれを世田谷区内のコンビニやドラッグストアでも持ち込みOKにして、持ち込んでくれた人にはリターンをお渡しするような循環の仕組みができればいいと思っています。

かおりん世田谷区に活動を広げた際、リターンにはどのようなものを考えていますか?

今は、僕たちのオンラインストアで使えるギフト券をリターンとしてお渡ししていますが、多くの方に関わっていただくことで、ユーザーさんに対しても、回収に関わってくださる事業者さんに対しても、もっと直接的なインセンティブをお渡しできると考えています。リターンは、喜んでもらえるものなら何でも良いと思っていますので、僕たちはそういう循環を世田谷区で生み出したいと考えています。

かおりん素敵ですね!それを、SETAGAYA PORTの中でも実現できればということでしょうか?

はい。先ほどの回収の話にしても、小さくまとまってしまうのではなく、「資源を回収する」という大きな枠組みの中で、「私たちはこのエリアを担当します」「私たちは衣類ではなく、この業種の回収をやります」という感じで、ゴミを減らす活動を大きな流れにできればいいですね。最初は小さな「村」みたいな活動だったとしても、いつか大きな「街」にできればいいなと思っています。

(文:コミュニティマネージャー かおりん)