今回の話し手 大橋海斗さん
現役高校3年生(2022年春で卒業)。VUCAの時代と言われる中、未来社会を創造できる若者を育てるため、部活動や学校生活だけでなく、より広い社会に目を向ける高校生を増やしたいという想いで活動中。
中高生が社会との接点を増やし、主体的に学ぶ姿勢を養うことを目指し、部活動改革・コーチング・サードプレイスという3つの観点から、学生団体を3つ創設。総合的な探究の時間に着目し、全国13校でのフィールドワークを行い、探究学習の実態調査を行うほか、調査結果を企業の講演会や全国200名以上の高校教員の前での講演などを行っている。
加藤慎平さん
ファッションシーンにムーブメントを起こすことを目指し、仲間たちとパリコレに向けて日々制作に励んでいる。ブランドディレクションの他、アイドル衣装やユニフォーム、オートクチュール衣装の制作など、網羅的に関わりながら幅広く活動中。
中村祥之さん
前職は高校生の進学・就職を支援する会社で勤務。年間150回以上の進路ガイダンスを企画し、たくさんの生徒の進路選択を支援。「本当は働きたくない」と泣きながら話す高校生に出会い、その現状を変えるべく転職。現在は東京都認定インキュベーション施設のコミュニティマネージャーとして勤務。起業支援に携わる傍ら、授業プランナーとして学校と社会の二つの視点で、「やればできる」を育てるため活動中。 HP:https://www.sheep-ccc.com/
教育への一歩
ぴここのインタビューでは、教育プロジェクトに関わってみての感想や展望などについて伺っていきたいと思います。最初に、皆さんはどんなことがきっかけで教育のテーマに関心を持ちましたか?
大橋海斗さん(以下、かいと)僕は高校生ですが、年齢に関係なく、自分の好きなことをやりたいという思いを持って、色々な校外活動などに参加してきました。
そして、根本から高校生の意識を変えるためには、まずは教育を変えていくことが必要じゃないのかなと思いました。そう考えているときに、HLABのSHIMOKITA COLLEGEのプログラムに参加してSETAGAYA PORTのことを教えてもらいました。僕も世田谷在住で、しかも教育に関わっているから、飛び込んでみようと思ってSETAGAYA PORTにジョインしました。
今こうして慎平さんや祥之さんと関われることは、高校生だとなかなか経験できないことだと思うので、こういった体験を色んな人に届けたいと考えています。
ぴこありがとうございます。かいとくんがこうしたプロジェクトに参加することで、周囲の高校生がより社会との繋がりに興味を持つきっかけになりそうですね!
かいと目線を合わせてくれていたのかもしれませんが、慎平さんはとてもフランクですごく接しやすかったです!
ぴこ慎平くんは、ファッションやアートのイメージが強いですが、これまで教育との関わりはありましたか?
加藤慎平さん(以下、慎平)ずっとファッションやアートと関わっているのですが、その中で社会とのつながりの重要性をすごく痛感してきました。デザイナーやクリエイターはうまく社会とのつながりを持てず、そもそもその重要性を理解できないことで、自分の殻の中に閉じこもったままアートを生産・消化して、なかなか売れず、結果的にやめていく人がとても多いです。
だから自分の周りのクリエイターだけでも、しっかりとファッションを通して、社会との関係性を理解して発信できるクリエイターを育てたいと考えるようになりました。元々教育に対して何か貢献したいという想いがあったわけではないのですが、漠然と”人を育てる”という観点で教育という側面に興味を持ち始めたのがきっかけです。
ぴこありがとうございます。祥之さんは、授業プランナーとして教育と密接に関わるお仕事をされていますが、教育に関するお仕事に就いたきっかけはどんなことでしたか?
中村祥之さん(以下、祥之)もともと学校の先生になりたかったということもあり、教育には強い関心がありました。進学したかったけどいろんな事情で働かなくていけない生徒と出会い、必ずしも自分の希望する進路に行けるとは限らない、そんな現状があることを知りました。
そういう現状の中でも、生徒はどうすれば自分らしい生き方を見つけ出せるのか日々考え悩んでいました。これまで、学習指導要領やキャリア教育についてずっと一人で勉強していて、自分の考えを話せる場所が全然なかったんですよね。なので、自分の課題意識を共有する場所や共感してくれる人、そしてアウトプットの機会を求めてSETAGAYA PORTにジョインしました。
(インタビューの模様)
トライアンドエラーを仲間とともに
ぴここれまで準備してきたイベントがようやく終わったと思いますが、教育のプロジェクトに携わってきてどう感じましたか?
かいと僕は高校生なので、慎平さんや祥之さんのような立派な肩書きはないですが、高校生としてこの場に関わったからこそ、他の人とは違った側面で価値を生み出せたのかなと感じます。
ぴこイベントでも、”大人と子供”、”運営と参加者”という分断が生まれないようにしようという想いがあった中で、かいとくんをはじめとした高校生チームが参加者目線でフラットな関係性作りに貢献してくれていました。
かいと大人と一緒に運営する経験をさせてもらって、ゼロベースで企画を考えるには色んな難しいことがあるんだなと、高校生ながら気づかせてもらったのが一番大きかったです。
慎平全体を通して、よく頑張ったなって思います(笑)。マラソンを完走したくらい嬉しいですね。持久力がついて、めちゃめちゃ良い機会だったなと思います。
企画をつくるにはたくさんの時間がかかるし、個性いっぱいのメンバーとオンライン上でやりとりする難しさも感じました。何度も振り出しに戻って、しんどいなと感じる時もありましたが、皆のモチベーションを下げないことが自分の唯一の仕事だったので、とにかく元気でやりきりました(笑)。
ぴこ慎平くんは、盛り上げ役という一番大事な仕事をやってくれてましたね!
祥之慎平くんがいるときといないときでは、全然雰囲気が違いましたもんね。
慎平やりたいことがある人だったり、転職など人生の岐路に立っている人がいたら、こういったプログラムをお勧めしたいです。同世代で社会に何かためになることをやりたいっていう人が多いので、ぜひそういう人ほど関わって欲しいなと思います。
ぴこ祥之さんは途中からの参加で戸惑いもあったかと思いますが、いかがでしたか?
祥之このプロジェクトは様々な職種や所属の人が参加していて、これまで教育に接する機会がなかった人もいます。そんな中で、教育業界で培った経験を活かして貢献することができてやり甲斐を感じました。
メンバーからはファシリテーション力を褒めていただくことが多かったのですが、議論が散らかってしまった時にまとめていく面白さもありました。いろんな角度で意見が飛び交うことがありますが、あれってめちゃめちゃ大事だと思っているんです。それがないと、すごいつまらない意見になってしまうし、それはSETAGAYA PORTっぽくないなって思うんですよね。
色々なバックグラウンドやいろんな思想を持った人が集まると、もちろんまとまるのは簡単ではないけど、それでもつくり上げていくというところが良いところだと思います。そこに自分の能力を活かすことができたのは、すごく良かったなと思います。
(教育プロジェクトのメンバー)
未来の教育への願い
ぴこ最後に、教育プロジェクトに関わってきた皆さんが願う未来の教育について聞いていきたいと思います。
世田谷の教育がこういう風になっていったらいいな、という願いであったり、 教育プロジェクトのイベントで出会った子ども達にこういう変化があるといいな、という想いがあれば聞かせてください。
かいと僕は、受動的な教育ではなくて能動的な教育になっていくといいなと思います。ただ教えるのではなく、子供たちの創造力を引き立てて、子供たちが自分から関わって行くような教育です。
2022年から高等学校で、「総合的な探究の時間」が導入されるんですよ。色々な自分達が好きな社会課題とかテーマを持ってきて、それを深堀りしていくというところがとても面白いと思います。その面白さを理解できる高校生はまだ多くはないけど、それはすごく社会的な価値があるし、それこそ自分が好きなことを仕事にできたり、社会との接点を見出すきっかけになると思います。
今、僕はSETAGAYA PORTに参加させてもらって、こういう縦の繋がりがすごくできているけど、普通の高校生はなかなかそういう機会がないので、探究学習というもので、社会との接点がつくれるのではないかなと期待しています。
慎平今までの時代は「自分さえよければ」「組織さえよければ」みたいな風潮がありましたが、教育とともにそういった時代は終わっていくんだなと、この活動を通して感じました。
未来の教育は、本当に人としての豊かさだったり、本質的な人間らしさについての教育ができればいいのかなと思います。何か学問を学ぶ前に、 その学問を学んだ上でどう目の前の人や大切な人、地球環境と関わり、貢献して行くのか、というところまで深く物事を考えられることが大切だと思います。今回のプロジェクトで未来の教育の在り方を考えることができたのは楽しかったです。
祥之自分のライフテーマに近いのですが、「やればできる」と思ってもらえる教育をしたいなと思っています。少し難しい言い方をすると、“成長マインドセット”と呼ばれるものがあります。その反対は“固定マインドセット”と呼ばれています。自分の能力は伸びしろがあり成長できる、何にでもなれるという姿勢が“成長マインドセット”です。
その逆に、自分の能力は生まれつき決まっていて、どんなに頑張っても伸ばせないという姿勢が“固定マインドセット”です。姿勢の違いによって、そのあとの成長度合いとか、自分の人生が大きく変わっていくという研究があります。”固定マインドセット”を持っている生徒は「学力が低いのは家庭環境のせいだ、頭が悪いから勉強しても意味がない、自分は努力しても成長できない」というような考え方をしてしまいます。
そうではなく、私は全ての生徒に「やればできるんだ!」と思ってもらいたいです。例え、今はできないかもしれないけど、頑張れば絶対にできるようになるし、そもそも能力はこれから伸びるものだから、自分はやれば何でもできるんだ、という感情を育てたいと思っています。例えば、テストの結果ではなく、どれだけ悩んで問題を解こうと思ったか、(努力の過程に点数を与える)そこに点数をつけてあげるといった工夫ができそうです。慎平くんが言った「人としての根幹の部分に対する教育」をやっていきたいと思っています。
ぴこありがとうございます。それぞれ教育に対する願いを聞くことができて、次世代の教育や進学に希望ある未来を想像することができました。
SETAGAYA PORTはこれから新しいメンバーも迎えながらアップデートを重ねて行くと思います。世田谷区の未来の教育のために、まずはこの一年目を皆さんと一緒に一歩一歩トライアンドエラーを重ねてきましたね。本当にお三方ともお疲れ様でした。
(文:コミュニティマネージャー ぴこ)
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