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メンバーストーリー

【メンバーストーリー #5】東京農工大学 樋野葵さんの挑戦~外来植物の研究を社会に届ける、新たな一歩~

SETAGAYA PORTでは、プロジェクトやイベントへの関わりを通じて、メンバーがどのように動き、つながり、変化していくのかを大切にしています。今回ご紹介するのは、東京農工大学工学部2年生の樋野葵さん。外来植物の研究を活かし、SETAGAYA PORTのプロジェクト「香る外来植物ラボ」で、駆除対象の外来植物を”お香”という商品のかたちにする挑戦をしました。

【Profile】
樋野葵さん
東京農工大学工学部2年
SETAGAYA PORTへの参画時期︰2026年1月〜3月頃
主な活動:香る外来植物ラボ、体験型キャリアデザイン教室

Good Life on EARTH:https://www.one-earth-g.a.u-tokyo.ac.jp/gle/

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外来植物の「活用」を考えるようになったきっかけ

樋野さんが外来植物の研究を始めたのは、高校生の頃でした。

もともと自然や昆虫が好きで、幼い頃から身近な生き物に触れてきた樋野さん。ある日、国蝶であるオオムラサキの幼虫だと思って持ち帰り、大切に育てていたところ、羽化してみるとまったく違う蝶だったことがありました。

驚いて調べてみると、その蝶が外来種であることが分かりました。さらに調べてみると、自分が見つけたものが地域では初めて確認されたものだと知り、「これは面白い」と感じたことが、外来種という存在や、外来種が生態系に与える影響に関心を持つきっかけになったといいます。その中で、人間の活動によって日本に持ち込まれた生き物が、今度は駆除の対象になっていることに違和感も覚えるようになったといいます。駆除される外来種を減らすためにも、海外の生き物をむやみに持ち込まないことの大切さをもっと多くの人に知ってもらいたいと考えるようになったそうです。

そうした関心を深める中で、もともと興味のあった植物や園芸にも目を向けるようになり、高校生の頃から外来植物の研究にも取り組むようになりました。

現在、樋野さんが研究対象としているのが「オオバナミズキンバイ」です。

地元・茨城県のレンコン畑でオオバナミズキンバイが増え、被害が出ているという新聞記事を目にしたことが、この植物に着目するきっかけになりました。

樋野さんはこう振り返ります。

「地元でそういうことが起きているなら、せっかく外来種を研究しているのだから、自分の研究を何かに役立てられないかなと思いました」

オオバナミズキンバイは、ちぎれた茎や葉からでも再生するほど繁殖力が強く、増えすぎると農作業や地域の生態系に影響を与えるため、駆除して繁殖を抑える必要があります。

そこで樋野さんが考えたのが、駆除した植物を商品として活用することでした。単に駆除するだけでなく、商品として新たな価値を生み出すことで、外来植物による課題について多くの人に身近に感じてもらえるきっかけをつくろうと考えたのです。

オオバナミズキンバイの駆除作業時の様子

SETAGAYA PORTとの出会い

そんな樋野さんがSETAGAYA PORTと出会ったのは、SHIMOKITA COLLEGEで開催された「体験型キャリアデザイン教室」でした。SHIMOKITA COLLEGEとは、高校生・大学生・社会人が暮らしながら学ぶ、日本初の “レジデンシャル・カレッジ”です。

小学4年生〜中学生に向けて、将来の選択肢を身近に考えてもらうことを目指したこのイベントで、樋野さんは子どもたちに自分の「好き」や「夢中」を伝える講師として参加しました。

「研究を発信することにも力を入れたいと思っていたので、教育という部分との親和性を感じて参加させていただきました」

このイベントを通じてSETAGAYA PORTの活動を知り、自分の関心を地域での活動につなげていく機会があることを知ったことが、その後のプロジェクトにつながりました。

「本当にダメ元で以前から考えていた外来植物を活用した商品づくりについて相談したんです。できないかもしれないと思っていたんですけど、すごく前向きに受け止めていただいて。その結果プロジェクトが始まりました」


専門性を持つ人たちと、プロトタイプをつくる

こうして始まったのが、外来植物を使ったお香のプロトタイプ開発プロジェクト「香る外来植物ラボ」です。

約2カ月にわたり、企画やマーケティング、コピーライティング、デザイン、調香、商品管理など、それぞれの専門性を持つプロボノメンバーとともに、プロトタイプ制作を進めました。

樋野さんにとっては、自分の研究を社会に届けるための新たな視点を得る機会に。一方、プロボノメンバーにとっても、それぞれの経験や専門性を地域や社会のために生かしながら、外来植物というテーマに向き合う機会となりました。

樋野さんにとって特に印象的だったのは、実際に専門分野で仕事をしている人たちと一緒に取り組めたことでした。

「マーケティングやデザイン、香りをつくる人など、実際にその分野で仕事をしているスペシャリストの方ばかりで、本当に勉強になりました」

研究を続けてきた樋野さんにとって新鮮だったのが、「商品として届けるための視点」でした。商品として形にするためには、素材だけでなく、パッケージやデザイン、伝え方など、さまざまな要素が必要になります。

「実際に商品にするにはパッケージなども大事です。でも、自分一人ではそこまで考えられていなかったので、一緒に考えていただけたことがすごくありがたかったです」

プロジェクトでは、樋野さんが持ってきた外来植物の粉末を、メンバーに実際に嗅いでもらう場面もありました。オオバナミズキンバイから感じられるのは、爽やかな緑茶に近い香り。その香りを初めて体験したメンバーからも、驚きや好意的な反応がありました。

「植物なのに、こんないい香りがするんだ、と皆さんが良い反応をしてくださって。それが嬉しかったです」

それぞれが専門性を持ち寄り、一つのプロダクトをつくっていく。その姿を間近で見たことは、樋野さん自身の将来を考えるきっかけにもなりました。

「大学では進路も結構迷っていたのですが、こんなふうに専門性を持って働いている方々を見て、こういうかっこいい人たちになりたい、と思いました」

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オオバナミズキンバイのお香のプロトタイプ

「活用すること」の先にある、新たな視点

プロジェクトを通じて得たのは、プロダクト・商品開発の知識だけではありません。外来植物を「活用する」というアイデアそのものについても、新たな視点を得たといいます。

樋野さんは当初、駆除した外来植物を商品に活用することで、駆除活動が促進され、外来植物の問題について知ってもらうきっかけをつくれると考えていました。しかし、プロジェクトメンバーとの議論の中で出てきたのは、まったく別の可能性でした。

「活用することが、逆に外来植物を増やすことにつながる可能性もある」

例えば、外来植物の香りや価値に魅力を感じた人が、「それなら自分で育てればいい」と考え、栽培や流通を始めれば、結果的に外来植物を広げてしまう可能性があります。

「これまでずっと『どう活用するか』を考えていた私にとっては、とても新鮮な気づきでした。同時に、まさにその通りだなと思いました」

単純に「活用すればいい」という話ではありません。外来植物を増やさずに活用するには、どのようなルールや仕組みが必要なのか。そこまで含めて考える必要があることに気づきました。

さらに、地域によって生態系や外来植物を取り巻く状況が異なるため、「ある地域でうまくいった方法を、そのまま別の地域に持っていけばいいわけではない」という視点も得たといいます。

この視点は、プロジェクトが終わった今も、樋野さんの研究につながっています。


「四年間の目標」が、みんなの力で形になった

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プロジェクトの集大成として、オオバナミズキンバイを素材とした紙状のお香のプロトタイプが完成しました。2026年3月26日には、完成したプロトタイプを外部の方々に向けて発表し、意見交換会を実施しました。

今回のお香は、一般的なスティック型ではなく、カードやしおりのように日常に自然に溶け込む形を模索しました。手紙に添えたり、ギフトにしたりと、暮らしの中で外来植物と出会うきっかけになるよう、プロジェクトメンバーで考えたのが「紙香」という形でした。

樋野さんにとって、このプロトタイプの作成はプロジェクトのゴールというだけではありませんでした。

「プロダクト・商品をつくるというのは、このプロジェクトだけの目標ではなくて、私がずっと研究してきた中での目標でもあったんです」

高校生の頃から続けてきた研究。その中で思い描いていた「商品にする」という目標が、異なる専門性を持つ人たちとのプロジェクトを通して、初めて形になりました。

「本当に嬉しかったです。しかも、一人じゃなくて、みんなのおかげでできたというのをずっと感じていて。みんなで『やったー!』って喜びました」

研究に向き合ってきた樋野さんの想いに、マーケティング、デザイン、調香など、それぞれの専門性が重なったことで、長く温めてきたアイデアが「社会に届けられる形」となったのです。

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完成したお香のプロトタイプ

プロジェクトが終わっても、研究は続いていく

SETAGAYA PORTでのプロジェクトは一区切りを迎えましたが、樋野さんの挑戦は続いています。

現在は、オオバナミズキンバイの香りだけでなく、その成分にも目を向けた研究を進めています。

「ただ香りがいいから使ってください、ではなくて、『こういう成分があるから価値がある』というところまで明らかにしていきたいと思っています」

研究計画を立てたり、支援してくれる先生を探したりしながら、成分分析に向けた準備を進めています。

商品についても、今後は一つひとつ手作りするのではなく、大量生産や製造委託ができる企業を探しながら、より多くの人に届けることを目指しています。プロジェクトで生まれた紙香のアイデアも、活かしていきたいと考えています。

さらに将来的には、地域ごとに異なる外来植物を、その地域に合った方法で活用し、それぞれの商品や取り組みを通して外来植物について知ってもらうことも構想しています。

「茨城でこの方法が成功したから、別の地域でも同じようにできるとは限りません。その地域に合わせた最適な方法を見つけることが大事だと思っています」

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迷っている時間があったら、やった方がいい

最後に、これからSETAGAYA PORTのプロジェクトへの参加を考えている人へ、メッセージを伺いました。

「本当に、迷っているなら、まずやってみた方がいいと思います。私はSETAGAYA PORTに参加して、本当に良かったです」

樋野さんにとってSETAGAYA PORTは、
「アイデアだったものを、形にしてくれた場所」。

「社会で働いている人たちが、一つのプロジェクトに一緒に取り組んで、自分が持っている知識を惜しみなく伝えてくれる。本当にすごい仕組みだなと思いました」

新たな視点を研究に活かしながら、社会に届ける方法を探す樋野さん。プロジェクトを終えた今も、そのまっすぐな挑戦は続いています。

今後もSETAGAYA PORTでは、メンバーの挑戦やつながりの物語を発信しながら、世田谷で新しい出会いや活動が生まれる場を育んでいきます。


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