今日の話し手 山中享さん

LOOVIC株式会社 代表取締役

ものづくり企業、テクノロジー企業を経験したのちスタートアップへ。発達障害を抱える子供を持ったことからテクノロジーで苦手意識を抱える人たちの課題を解決していこうと考えた。

三次元での迷う・探すを無くす新体感誘導プラットフォームの開発

かおりん山中さんが開発しているサービスを具体的に教えてください。

山中享さん(以下、山中)身につけることで目的地まで無理なく誘導するウェアラブルデバイスと、それらを効果的に活用するためのアプリケーションやインタラクションなども含めて開発しています。

具体的には、目的地を指定することでスマホ画面を一度も見ることなく、手を引いて目的地まで導いてくれる・・・そんなサービスになっています。手を引くように人を導くという体感の設計が肝になっていて、できる限り人間の自然な感覚を大切にしています。
いわば、お母さんが子どもの手を引っ張って「こっちだよ」と伝えてくれるような感覚ですね。

サービス開発のきっかけは身近にあった

かおりん山中さんがこのサービスを立ち上げたきっかけは​​どのようなことだったのでしょうか?

山中発達系の課題がある方々は、得意なことも苦手なことも人それぞれです。

私の子どももそのひとりで、空間認知における課題を持っています。彼は知らない場所に外出をしたとしても、1人で戻ってくることが出来ません。一般の方ならば、数回歩けばある程度道を記憶することができますが、彼はなかなか覚えにくく忘れやすくて、同じ道を1年間くらい歩き続けなければ覚えることができません。

今は助けてくれる大人たちが周りにいますが、彼自身が大人になった時に彼を助けてくれる人たちが少なくなることを危惧しています。なぜなら、見た目も話し言葉も至って自然ということが、社会で理解されにくいということの原因にもなっているからです。そんな彼の“苦手”をテクノロジーで支えてあげることによって、社会に出ていくときの障壁を減らしてあげられないか、と考えたことがサービス開発のきっかけです。

私は過去にテクノロジー企業に所属していたために、テクノロジーを事業化することが人よりちょっと得意だったりします。この経験を生かして発達系の課題を抱える子ども達にテクノロジーで解決できないか?と、取り組んでいることがこの事業です。

SETAGAYA PORTへの参画がサービス開発を加速させる可能性を秘めている

かおりん想いの込もった素晴らしいサービスを開発されていますね!活動発信の場としてSETAGAYA PORTを選んだ理由があれば教えてください。

山中SETAGAYA PORT自体が、社会的な課題を解決するような枠組みの中で人との繋がりを生み出したり、コミュニティ形成を行なっているので、LOOVICとの親和性が高いと感じました。

そういう意味でも、この取り組み自体に共感・賛同いただける方々が多く集まってくれたら嬉しいです。サービス開発にあたり、人、モノ、金、情報、すべて重要ではありますが、一番大切な部分は“共感を得る”ということだと思っています。共感を得られなければお金も人も集まらないですし、ビジネスとしても進みません。

SETAGAYA PORTにはデザイナーの方も多くいらっしゃると伺っていますが、デザイン思考の技術やプロダクトデザインからぜひアドバイスまたは、プロジェクトに参画してもらえるととても嬉しいです。

現状はまだ事業を立ち上げたばかりで、皆さんの協力を得なければならない状態なので、共感の上で「手伝うよ」と言ってくれる方々がいらっしゃると実現スピードが上がりそうで嬉しいです。もちろん事業化された場合には、このサービスを通じて多くの方に還元していきたいです。

また、自身のサービスに限らず、社会課題を技術で解決できる部分もたくさんあるので、私個人もSETAGAYA PORTで生まれるプロダクトやサービス開発には積極的にエントリーして参加していきたいと思っています。

かおりんSETAGAYA POETの基本的な考え方や、産業連携のプラットフォームという在り方が開発を加速させる一助になると嬉しいです。また、山中さんの知見や経験を生かして他のプロジェクトにもお力添えをいただけるとのことで、期待しています!!

続けてお伺いしたいのですが、具体的に世田谷で行いたいことのイメージは既にお持ちですか?

山中そうですね、世田谷区の地形は、とても奥が深くもっと探求したい街ではあるのですが、空間の認知で課題のある方々や、初めて訪れる方にとってはやや迷いやすい街でもあるので、実証実験をするにはにはとても適した街だと考えています。

目指すはユニバーサルな仕組みづくり

かおりんこの先挑戦したいことがあれば、ぜひ教えてください!

山中まずは、このサービスをしっかり開発することですが、課題のある方々だけではなく、一般の方々にも必ず貢献できる形になると確信していますので、それを早く実現できるように取り組みたいです。

今、我々にとってスマートフォンの地図を見て移動することはついやりがちな行為ですが、システム自体が、人間に無理をさせています。いわば、歩きたいけど、地図も見たいといった形です。実際に、スマートフォンなどのデバイスを見ながら移動をすることで、人にぶつかることや、事故が発生する原因になったりします。
しかし、これらの課題は人が使いやすいモデルを意識することで、技術もそれを解決するためにどうすればできるだろうか?という考えからそのシステムを再設計できるようになります。この技術をフィールドで早く実証できるように、世田谷区での取組により事業を広げ、ゆくゆくは日本のみならず海外にも展開できるように目指したいです。

「テクノロジーを使って“苦手”をなくしていこう」というのが、僕らのコンセプトです。苦手を感じる人に、特別に提供する、というのではなく、苦手を感じている方も、一般の方も同じく使え、さらには、成果も同じレベルで解決できれば、特別感がなくなっていきます。すなわち、「あの人は苦手な人」ということも感じること無く、無意識的に生活ができるようになります。

こういったように、だれもがユニバーサルにテクノロジーを使うことができるようになれば、自然とお互いを認めあえるようになっていきます。

僕たちだけでは、当然できる技術領域も限られてしまうので、違う領域でも同じようにチャレンジしてくれる人たちが増えるような活動をすることで、より一層フェアな社会が広がっていくと考えています。

(文:コミュニティマネージャー  かおりん)