今回の話し手 岩槻正康さん

株式会社東果堂 代表取締役。​アメリカ合衆国生まれ。東京出身。ニューヨーク州立ファッション工科大学卒業後、DEAN & DELUCA JAPAN、光文社などを経て2009年にフタバフルーツに入社。同社ケータリング担当。2020年にフルーツ専門店「東果堂」を設立、同社の代表取締役に就任。

ウェブサイト:https://www.tocado-fruit.tokyo/presskit
Instagram:https://www.instagram.com/tocado_fruit/

今回、東果堂 代表取締役の岩槻さん、COOの鈴木さんのお二人にお話しをうかがいました!

素人ながら飛び込んだ果物の世界

事務局 まずはじめに、東果堂さんのご紹介とこだわりポイントを教えてください。

東果堂 COO 鈴木亜由美さん(以下、鈴木さん)世田谷区若林にお店を構え、「美味しく楽しく余す事なく」をテーマに活動している、フルーツのことであればなんでもやる会社です。

店舗での販売はもちろんのこと、一番力を入れている事業がフルーツのケータリング事業です。撮影現場などの差し入れなど、メディア業界やエンタメ業界に利用いただくことが多いです。フルーツは、老若男女、国籍問わず食べることができるため、お誕生日などで個人の方へのニーズも増えてきています。

東果堂のテーマである「美味しく、楽しく、余す事なく」に沿ってお伝えすると、美味しいフルーツを店頭に置くのは当たり前だと思っており、新しいいろんな果物と出会える楽しさもご提供しつつ、市場や産地でさまざまな理由で売り物にならなくなったフルーツを、ちょっとポジティブに「エシカルフルーツ」と命名し、余すことなく加工などもしながら活用しています。


事務局「フルーツ専門店」をはじめられた背景を教えていただけますか?

東果堂 代表取締役 岩槻正康さん(以下、岩槻さん)私自身が食に携わる事業を立ち上げたいと考えていた際、熱意あるフルーツ屋の3代目の方に出会ったのがきっかけです。フルーツ事業は今、斜陽産業なのですが、3代目の方がモチベーション高くフルーツに関わっている姿を見ているうちに、フルーツの食材の奥深さに気付いたのです。

世界中の人がフルーツのことを好きにも関わらず、特に日本ではフルーツ離れの現状です。どうしたらこの状況を打開できるか考えた結果が、「食べる機会をつくる」ということでした。フルーツを囲んで場が華やぐ瞬間を何度も見てきた経験から、そこにフルーツの価値があると思っています。フルーツを食べて感動し、自分の家でも食べたいと思える人々を増やさなければ状況は変わらないと思ったので、東果堂は、ケータリングを軸にしています。また、こういった東果堂の想いに共感してくださった方々が、店舗に足を運んでくださるケースが多く、とても嬉しいです。

先程、エシカルフルーツの取り組みをお伝えしましたが、果物の業界では、食べられる状態でも見た目だけで正規ルートでは取引されないケースがあります。傷がついていると傷みやすいため、お金を払って捨ててしまうなんてことも場合によってはあります。業界の方々は、代々、良いもの(美味しい上に美しいフルーツ)を販売するということを大切にしていらっしゃるので、文化を守っていくためにも大切なことではあるのですが、代を継いでいない私だからこそ、ひと手間を惜しまずかけて加工することで、また別の価値が生まれると考え、価値があるものを無価値にしてしまうのはもったいないという精神で取り組んでいます。

エシカルフルーツを乾燥機でドライフルーツにしている様子

そして今、加工をしても、どうしても出てしまうごみ(端材)に価値を見いだせないかと思い、捨てるはずだった果物の皮などを乾燥させ、下北沢で緑を循環させる取り組みを行う「シモキタ園藝部」さんが管理するコンポストで肥料にする取り組みをはじめました。試行錯誤をしながら行っています。

事務局出会いをきっかけに、フルーツ業界に飛び込まれたのですね。フルーツに新たな価値を生み出すために取り組んでいらっしゃる心意気が素敵ですね。

岩槻さん純粋に面白いなと思ったのです。フルーツ業界にある習慣を、より良い方向に変えていくことで業界全体の向上をしたい、つなげたいと思っています。

あくまでもエシカルフルーツというのは取り組みの一環のため、ゆくゆくは世の中で当たり前となり、なくなっていってほしい言葉だと思っています。まずは、東果堂が実験として取り組んでいますが、いろんな使い道が見えてきたら、フルーツを扱うさまざまな業界にもノウハウを伝えていけたらと思っています。

事務局エシカルフルーツの取り組みを、業界の方に受け入れていただくなかでの壁などはあったのでしょうか?

岩槻さん最近は、理解していただけるようになってきました。ただ、規格外の商品をSDGsの観点で取り組みをするために売ってほしいという方もなかにはいらっしゃったりするのですが、あくまでも正規品のフルーツで販売するということに価値があるので、そこは間違ってはいけないと思っています。私たちはあくまでも、ちゃんと美味しいフルーツを届けるということを念頭に置いているので、正規品のフルーツもエシカルフルーツも両方引き取るということをしっかりと伝えた上で購入させていただいています。

昨今の状況下で、ビジネスとしては厳しい時期が続きましたが、この事業と取り組みは世の中に必要だと思っているので、もちろん東果堂として、たとえ一人になったとしてもやり続ける気概でいます。

事務局その熱意に、感動しました。

店舗では、ドライフルーツや搾りたてジュースも販売されていらっしゃいますよね。実際にジュースをいただき、とても美味しかったです。

フルーツをきっかけに楽しさを売る

事務局お店に入った瞬間、フルーツの良い香りがしました。先月イベントを開催されたとうかがいいましたが、詳しく教えていただけますか?

岩槻さんケータリングは、どちらかというと撮影現場などクローズドな場所での提供になるので、幅広く知っていただくために、初めてのフルーツ展示会「タベツクスフルーツ展」を実施しました。
想定以上に、事前チケットの予約が埋まったこともあり、大盛況でした。展示エリアのほかに、キッチンで社長自らがカットしたフルーツを食べていただくコンテンツも用意しましたが、フルーツのポテンシャルを再度実感できる展示会になったと思っています。

先程、お話しにあがったシモキタ園藝部さんとも、SETAGAYA PORTのエシカルギフトマーケットをきっかけに知り合い、今回の展示会にも、小さなコンポストを展示いただきました。

岩槻さん東果堂だけでフルーツの魅力を発信していても限界はあるので、真似をするような事業者が増えれば、ある意味で業界が盛り上がるのではないかと思っております。

流行りではなく、このフルーツ業界に未来を感じて取り組みを続けていく事業者の人たちが現れたらいいなと思います。


これからも目が離せない、新たな取り組みをかたちにし続けるフルーツ専門店、東果堂。『Podcastをやるフルーツ専門店』として、Podcastでの発信もスタートされているのだとか! ぜひ、世田谷区・若林にある店舗や、東果堂さんのイベントに、エシカルフルーツやお二人に出会いに足を運んでみてください。