今回の話し手 濱本一樹さん

2000年生まれ。アーティスト。ダウン症候群。幼い頃から絵を描くことが好きで、中学2年生から毎日欠かさず、一編の詩や絵を創作することを日課にしている。
2023年7月、世田谷区にギャラリーオレンジ八幡山をオープン。
同ギャラリーのCHO(Chief Happiness Officer)を務める。

ウェブサイト:https://gallery-orange-hachimanyama.jimdosite.com/
Instagram:https://www.instagram.com/gallery.orange8/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D/

セタオーレーベルseason2とコラボレーションに至るまでの経緯は下記をご覧ください。
『「セタオーレーベルseason2」 グローバルに活躍するアーティストを迎え、新たな7曲をリリース!』
https://setagayaport.jp/news-events/setaolelabel_season2

表現を通して社会と向き合う

事務局絵と詩(歌詞)を書くようになったきっかけはありますか?

濱本一樹さん(以下、一樹さん)絵は生まれながら好きでずっと描いています。詩は、中学でつらかった時期があり、「なんで僕のことこんな扱いするんだろう」と思った悔しい気持ちを詩に書き始めました。周りからお前は何もできないと言われて、1人の親友とノートだけが友達だった時期もありました。
自分自身や社会の理不尽な出来事を受けて感情が高ぶるときは、家に帰ってすぐに紙と向き合い、絵や詩を制作します。

アンシェーヌ藍にてお話いただいている一樹さん

そんな話を祖父に相談すると「自分は自分、っていうものを持っとけ。」とアドバイスをもらったのを今でも覚えています。その祖父から「文章続けろよ。毎日書き続けたら力になるぞ。」と言われてから、日付も入れて本当に毎日文章や詩を書くようになりました。すごくいい祖父なんです。
両親はけっこう厳しいところもあって、伝わりづらい作品はよく分からないとはっきり言ってくれます。書き直すこともよくありました(笑)。でもその方がどんどんスキルアップできるので、芸術に厳しい両親でよかったなと思っています。

事務局ご家族のみなさんが真っ直ぐに一樹さんと向き合い、応援されているのが伝わってきます。

一樹さん本当に感謝しています。僕は詩もたくさん書いていますが、人に読んでもらうものは両親の意見を聞いてからというものがほとんどです。元々見せるために書いているわけではないので、本当にいいものが出来たときだけ読んでもらっています。両親にはたくさん 支えてもらって、苦労させてしまったなと申し訳なく思っています。

アンシェーヌ藍にてお話いただいている一樹さんとお母さん

事務局一樹さんは絵と詩だけでなく、バンドに所属してステージで歌を歌ったこともあると聞きました。

一樹さんはい、所属していたバンドグループでコピーした忌野清志郎さんの楽曲を涙が溢れそうになりながら歌ったこともありました。中学生の時から僕は詩を書いているので、今は楽器ができる方と繋がりたいなという思いがあります。高校を卒業した頃は、音楽の専門学校に行くことも考えました。

事務局そうだったのですね。セタオーレーベルseason2の新曲リリースイベントには、楽曲を制作していただいたアーティストの方々もご出演いただくので、何かコラボレーションができそうですね!

一樹さんえー!それはぜひイベントに自作の詩を持って行きたいです!

" 仕事はコラボレーション "

事務局今回、セタオーレーベルとコラボレーションしてみたいと思ったきっかけはありますか?

一樹さん僕は自然が好きなので、セタオーレーベルの楽曲の自然な生活音や作業音を集音した音にピンときました。今回の藍染め工房でも「水」がたくさん使われていて、「あ、いいな。」と思いました。それと、セタオーレーベルが “混ざり合い” をイメージしているところです。

事務局どうして水に惹かれたのでしょうか?

一樹さん水のはたらきによって地層を作ることもできるほど、水が集まると大きな力になるところに偉大さを感じています。好きな人物が言った「Be water. 友よ水になれ。」という言葉があるのですが、実際僕は本当にその通りだと思っています。だから僕たちも水のようにまとまり、混ざり合えたらいいなと。

ファクトリー藍にて藍染の甕の写真を撮影する一樹さん

事務局なるほど。一樹さんの水のようになれたらという考え方と、セタオーレーベルの混ざり合うというコンセプトにシンパシーを感じていただけたのですね。

一樹さんそうですね。仕事は僕の中で “コラボレーション” だと思っています。社会で仕事をしていくのは時には辛い思いをすることもありますがると思うけれど、自分の考え方に共感できるところで働けばみんなも楽しい顔をして電車にも乗れるんじゃないかと思うんです。たくさん「大人になれ」と言われてきた中で、「どういうことだろうな」「自分が描いた大人になれたらいいな」とずっと考えていましたが、最近自分なりの答えを発見しました。

ファクトリー藍にて刺し子の質問をする一樹さん

事務局まさに一樹さんの人生は混ざり合いですね。そう思ってコラボレーションしていただけて我々もとても嬉しく思います。ご自身の作品やお話をする中で一樹さんの幸せや平和を想う気持ちがとても伝わってきますが、「ラブ&ピース」な想いは何か影響を受けた人物やきっかけはあるのでしょうか?

一樹さん2人の方から影響を受けています。僕のひいお爺さんが太平洋戦争で亡くなった話を聞いたことから世界平和を願っています。そして音楽が好きな僕は忌野清志郎さんの歌からも平和の思いを感じ、彼のように表現者として僕自身も周りに発信したいという思いがあります。

事務局一樹さんの仕事や社会への想いをお聞かせいただきましたが、今日は実際にファクトリー藍とアンシェーヌ藍の現場を見学してみていかがでしたか?

一樹さん(ファクトリー藍とアンシェーヌ藍は)表現の場だなと思いました。実際に足を運んでみるってとても大切ですね。僕と似たようなことを考えている人がいるんだ、ということを知れて安心もしています。僕自身、自分の好きなことで仕事ができるとは思っていなかったので...。本当に絵が好きで生まれてきてよかったなって思っています。ファクトリー藍さんの作品やアンシェーヌ藍さんのお料理をもっと多くの人に知って欲しいですね!

完成したコラボレーション作品 
「セタオーレーベルseason2」イメージアート

青く輝く光
闇を灯す光のシャワー
君が君自身であるために
その光で君を満たしたい
魔法の雨の中・・・
君も優しい光で人を満たすことができる
ハープの音色は物語を知ってる
この部屋でみんなが希望に満たされる

藍に眠る夢
障がいって生きて行く上で
どんな人にもつきものなんじゃないかな?
深海は死が沈んでる所
でもそこに小さく輝く夢も沈んでる
暗くて静かで水圧でしめつけられる場所
でもその底に行かないと夢は拾えない

深海は昔は明るいステージだったんだ
藍と一緒に冒険に出よう
夢をひろいに行こう・・・

一樹さんの、社会や誰かを想うやさしい気持ちが込められた作品の数々を見ていると、不思議とあたたかい気持ちになっていきます。今回のイメージアートでも、彼にしか描けない世界を表現していただきました。

次々と新たな夢を叶えていく一樹さんの今後の活躍が楽しみです。ぜひ一度「ギャラリーオレンジ八幡山」にも訪れてみてください。


セタオーレーベルからインスピレーションを得て描いた作品