今回の話し手 中村勘太さん(写真右)

〈世田谷福祉作業所〉

法人の理念である「自分を愛するように、あなたの隣人を愛せよ」に基づき、利用者一人ひとりの立場に立ち、なによりも人権を重んじ、障害の有無にかかわらず、利用者の個性・能力・強みに応じて、喜びや生きがいのある活動・生活を目指して支援しています。

〈中村勘太〉係長/相談支援専門員

大学卒業後、社会福祉法人武蔵野会に入職。働きながら、介護福祉士や社会福祉士等の資格を取得。現在は、通所者への支援に加え、施設の折衝窓口や法人研修の運営等にも従事している。

「一人ひとりの人生に寄り添った支援を」

あっきー世田谷福祉作業所の取り組み概要を教えてください。

中村勘太さん(以下、中村)世田谷福祉作業所は、主に知的障害のある方への様々な活動支援を行う通所型施設です。概ね18歳以上から80代まで幅広い年齢層の方が利用されており、3つの事業を通じて利用者さまへの支援をしています。

職業訓練を経て一般企業への就職を目指していく「就労移行支援」、作業所が民間企業などから請け負う仕事を福祉作業所で日中活動として行う「就労継続支援B型」、生活に必要な支援を支援員から受けながら様々な日中活動を行う「生活介護」、これら3つの事業になります。

あっきーありがとうございます。中村さん自身のご経歴も教えてください。

中村大学を卒業したのち当法人に入職しました。もともとは今の作業所ではなく、ほかの施設に配属となり、24時間365日の生活も含めた支援をすることが主な職務でした。5年目になるところで、世田谷福祉作業所に異動となりました。

現在の仕事の主な役割としては大きく2つあります。まずは、利用者さまの個別支援計画の作成と実現に向けたフォローです。「作業所でどんな過ごし方をしたいか」「将来どうなりたいのか」という目標は利用者さま一人ひとり違います。個別の目標を立てて、利用者さまご自身で達成可能なこと、支援員がサポートしながら達成すること、それらを計画表として落とし込み、その後の実現にむけて伴走します。

もう一方で、作業所施設が対外的に地域とつながれるような広報活動を行います。施設での活動内容などを地域の方に知っていただくことや、架け橋としての役割を担っています。細かく挙げればもっとたくさんありますが、大きくはお話しした2つになります。

あっきー地域への広報活動とは、例えばどんなことをされているのでしょうか。

中村本体事業のひとつとして、施設に通所される利用者さまが充実した生活を送れることにあるので、そこにつながるような内容です。 例えば、先ほど紹介した「就労継続支援B型事業」であれば、お仕事をいただけそうな事業者や民間企業を開拓していくこと、「就労移行支援事業」であれば、雇用先になり得る民間企業の開拓をしていくこと、「生活介護事業」であれば、利用者さまの日中活動をより充実するような活動の提供を期待できる外部の専門の人と繋がっていくこと、などが挙げられます。

利用者さまには、音楽に興味関心が高いなど異なる持ち味がある方や、専門的なリハビリや訓練が必要な方など様々な方がいらっしゃいます。支援員だけでは叶えることが難しい領域については、プロや専門職として助言をしてくれる人や活動を提供してくれる人の協力が必要です。そういった人たちの協力があるからこそ、利用者さまの日常生活が充実するという面があります。

(就労活動の様子)


(焼菓子の製造作業)

「地域とのつながりをより強く、濃くしたい」

あっきー「外部の専門の人とつながる」「利用者さまの日中活動の充実」というキーワードが出てきましたが、例えばどのような取り組みをされていますか?

中村アート活動は多くの福祉施設で行われる活動のひとつです。ただ、私たち支援員だけで活動提供する場合、「絵を描きましょう」「ハサミを使って切り貼りしましょう」といったことくらいしかできませんでした。具体的な例として、世田谷区内のアートイベントに作品を出展したことがありますが、外部の専門の方にご協力いただいて、素材やデザインなど企画段階からご提案していただいたことで、利用者さまのリアクションや作品のクオリティが全然変わってきました。

私たちだけで進めるよりも、一緒に活動してくださる方がいてくれたことで、より良い形でアートイベントに取り組むことができたと思っています。

(アート活動に取り組む様子)


あっきー今後チャレンジしていきたいことなどはどのように考えていますか?

中村利用者さまは基本的には週5日で施設に通っています。1年のほとんど、1日のほとんどを施設で過ごすので、長い目で見るとどうしてもマンネリ感が出てきて、日常活動に退屈することもあるかもしれません。

一方で、ずっと福祉の現場で働いている私たち支援員は、マンネリ感を払拭するために色々なアイデアやプログラムを考えますが、すべて自前で出来るのかというと難しい部分も多くあります。そこに、地域の方たちが持っているノウハウや経験などをうまく取り入れながら、活動に連携が生まれれば、利用者さまの日常活動にもハリが出てくると思います。

地域の方とつながり、連携した活動提供を通して、利用者さまの生活全体が豊かになる取り組みがもっとできればと良いと思っています。

「SETAGAYA PORTへの期待」

あっきー世田谷区福祉作業所は、SETAGAYA PORTのコンテンツのひとつ、SETAGAYA SOCIAL LABOというプロジェクトでご協力いただいています。なぜSETAGAYA PORTへのご協力をいただけたのでしょうか?

中村どの業界でも、自分たちの業界や会社だけがうまく回っていれば良い訳ではなく、「いかに地域と関わっていけるか」「自分たちが地域になにを還元できるか」を考えることが当たり前になってきていると思います。私たちのいる福祉業界も例外ではなく、利用者さまが施設で安全に生活できればいいだけではなく、福祉業界・福祉施設だからこそ地域に貢献・発信できることを開拓していく必要があると思っています。

一方で、SETAGAYA PORTは多種多様なメンバーが、世田谷のちょっと先のミライや新しい取り組みを生み出すための活動をしている団体だと認識しています。

何ができるかはわからないけれど、利用者さまの生活への良い変化を起こしつつ、地域との連携や還元ということにも取り組めるのではないか、そんなことを感じたのが一緒に活動することに踏み切るきっかけでした。

あっきーおっしゃる通り、SETAGAYA PORTには多種多様なメンバーがいて、だからこそ利用者さまの視野を様々な角度で広げる支援ができるのではないかと思っています。

今後、SETAGAYA PORTメンバーと取り組みたいことなどお伺いできますか?

中村正直に言うと、何でもいいと思っています(笑)。どうでもいい、ではなく「何でもいい」です。

SETAGAYA PORTに集う皆さんそれぞれが持っているもので、利用者さまの日常生活にほんのちょっとでもスパイスが加わったらいいなと思っています。 総勢では60名近い利用者さまが通っていますが、利用者さまそれぞれの生活がほんのちょっと変わるだけでも、とんでもないエネルギーだと思います。それが例え5秒や10秒のことだとしても、60名全員の生活の何かが変わったということになったら、とても素敵なことだと思います。

施設にある環境やモノ、人をうまく活用してこんなことができるよ!などもどんどん教えてほしいと思っています。支援員にとっても、「うちはこんなこともできる可能性があるのだ」という気づきを得られることにつながりますので。とても受身な感じになってしまいますが、皆さんのアイディアを通じて、一緒に様々な可能性を広げていければと思っています。

(文:コミュニティマネージャー あっきー)